腫瘍科

綿貫 貴明
日本大学生物資源科学部獣医学科 卒業
獣医腫瘍科認定医U種
【所属学会】日本獣医がん学会

 近年、犬や猫の高齢化に伴い、腫瘍(がん)の発生が非常に多くなってきました。イボだと思っていたしこりが実は悪性腫瘍だったり、気付かない間に体内で腫瘍が進行していたりすることもあります。そういった場合、見た目では判断が付かないことも多く、詳しい検査が必要になります。

 当院では腫瘍科を設置し、腫瘍疾患に対する専門的治療を行っています。腫瘍外科手術や化学療法、大学病院と連携した放射線療法など様々な方法を組み合わせながら、治療を実施しています。しかしながら、病気の症状・本人の性格・家庭環境などはそれぞれで異なるので、飼主様とよく相談しながら最良の治療を行っていきたいと思っています。

 腫瘍疾患は早期発見・早期治療が重要です。ご自宅で皮膚にしこりを見つけた場合や、治療中の疾患のセカンドオピニオン、腫瘍早期発見の為の健康診断など、気になることがありましたらまずはご相談下さい。

【場所】

プリモ動物病院 相模原中央
住所:神奈川県相模原市中央区東淵野辺4-11-45
   地図はこちら
電話番号:042-750-7880

【専門外来時間】

腫瘍科に関しては、常時、外来を受け付けておりますが、予約診療も可能です。
【診療日】
日・月/9:00〜20:00
火・水/16:00〜20:00

予約に関してはお電話042-750-7880または メールでご確認ください。

腫瘍の診断

WHOのTNM分類に基づいて、原発巣(T)・リンパ節(N)・遠隔転移(M)の3点を評価します。

原発巣の評価

原発巣とは腫瘍が発生している部位のことで、どのような腫瘍が現在どのような状態にあるのかを知ることが腫瘍診断の入口となります。評価方法は発生部位によって検査が異なります。

【視診】
体の表面にできた腫瘍 形、大きさ、硬さ、色、固着性、自潰の有無などを確認
【レントゲン・エコー検査】
内臓や骨など体内にできた腫瘍の確認 周囲組織への浸潤度の確認
【高度画像診断】
CT検査、MRI検査 レントゲン、エコーで確認できない腫瘍の確認(特に脳・脊髄など)
【血液検査・骨髄検査】
血液・リンパ系の腫瘍 


乳腺腫瘍

肝臓腫瘍(CT画像)

胸腺腫(CT:3D画像)

これらの検査と合わせて、どんな種類の腫瘍かを調べるために、細胞診検査や組織生検などを行います。

【細胞診検査】
腫瘍に細い針を刺して細胞を採取し、腫瘍がどのような細胞でできているのかを確認します。
○腫瘍と炎症(細菌感染など) や 過形成(正常組織の過剰増殖)などの鑑別
○腫瘍の良性 or 悪性の鑑別
○腫瘍の種類の鑑別
メリット・・・細い針を使用するので動物への負担が少ない
デメリット・・・腫瘍のほんの一部の細胞しか採取できないので診断率は 高くない
☆一部の腫瘍(リンパ腫,肥満細胞腫など)については細胞診で診断可能


リンパ腫

肥満細胞腫

悪性黒色腫

【組織生検】
 腫瘍の一部を切り取り、病理検査を行います。
メリット・・・細胞診検査より大きい組織を採取できるので診断精度が高くなります
デメリット・・・発生部位によっては全身麻酔が必要な場合や実施不可能な場合もあります

2.リンパ節の評価
 腫瘍の主な転移経路の一つにリンパ管を介したリンパ節転移があります。リンパ節への転移は、腫瘍に近いリンパ節から浸潤していきます。そのため、腫瘍の進行度を把握する上で、リンパ節の評価は重要となります。
体表のリンパ節については触診で、体内のリンパ節についてはレントゲンや超音波検査などで、リンパ節の増大を確認します。
リンパ節の大きさ、硬さなどを確認し、必要に応じて細胞診検査や組織生検を行い、リンパ節への腫瘍の浸潤の有無を確認します。

3.遠隔転移の評価
 原発部位から離れた臓器への転移の有無を確認します。遠隔転移の確認はレントゲンやエコー検査を行います(CTを実施する場合もあり)。
リンパ節の評価同様、遠隔転移の有無も腫瘍の進行度を把握する上で重要となります。
一般的には肺への転移が多いですが、腫瘍の種類によっては肝臓、脾臓、骨などの部位で起こることがあります。


肺野への遠隔転移

肺野への遠隔転移(緑矢頭:CT画像)

4.全身状態の評価
 腫瘍の治療には腫瘍の評価に加え、動物の全身状態を把握する必要があります。手術や麻酔に耐えられるのか、抗癌剤を使うことができるのかなど、適切な治療が実施可能かどうかを評価します。
血液検査やレントゲン検査などで腫瘍以外の異常を確認し、全身状態を評価します。

腫瘍の治療

 腫瘍に対する治療法は、主に外科療法、化学療法、放射線療法の3つが中心となります。腫瘍の種類や発生部位などにより、適用となる治療法が変わってきます。また、状況によりこれらを併用する場合もあります。
 当院では外科手術、化学療法を実施していますが、放射線治療は特殊な治療装置が必要となるため、大学病院への紹介を行っています。

1.外科治療
 多くの腫瘍で外科療法が治療の第一選択になります。
○最も治療効果が高い
○手術侵襲による負担、身体的欠損など

外科療法は大きく根治的手術と緩和的手術に分けられます。
根治的手術・・・根治を目的として腫瘍を周囲の正常組織ごと大きく切除
緩和的手術・・・完全切除が難しい場合に、症状を軽減させる目的で行う手術
★緩和的手術後は必要に応じ化学療法や放射線療法を併用します。

2.化学療法
 いわゆる抗がん剤治療のことです。リンパ腫、白血病など血液由来の腫瘍では治療の主役となります。
○特殊な設備が不要
○手術後の補助治療(再発・転移の予防)
○放射線治療と併用(放射線の増感作用)

○抗がん剤による副作用の問題
一般的な副作用は、骨髄抑制、嘔吐・下痢、脱毛などの症状です。重篤な副作用を出さず、高い治療効果を得るには化学療法の正しい知識と経験が必要となります。

○メトロノミック化学療法
メトロノームのように定期的にごく少量の化学療法剤を投与する方法です。腫瘍を小さくするというより、成長を止めて休眠状態に導くことを目的とします。従来よりも副作用が出にくく、体への負担を考慮した治療法です。

3.放射線治療
 高エネルギーの放射線を腫瘍に照射することにより、腫瘍細胞を死滅させます。
○手術が困難な部位でも治療可能
○照射毎に全身麻酔が必要
○実施できる施設が限られる

4.免疫療法
 上記の3大療法に加えて、活性化リンパ球療法等の免疫療法も行っております。副作用の少ない新しい治療法として取り入れております。
免疫療法・代替療法について

手術症例

直腸炎症性ポリープへの直腸粘膜プルスルー術
【症例】ミニチュアダックス 8歳 避妊雌
【経過】内科療法に反応しない慢性の粘血便を主訴に来院。直腸検査、内視鏡検査にて直腸腫瘤を確認。内視鏡下生検の結果、直腸腫瘤は「炎症性ポリープ」と診断された。



【手術】直腸粘膜プルスルー(腫瘤ごと直腸の粘膜のみを切除する手術)を実施







【補足】 近年、中〜高齢のミニチュアダックスフントにおいて直腸ポリープの発生が高頻度に認められています。症状としては慢性的な血便、下痢、しぶり(便をする姿勢をとるが排便しない)などがあげられます。内科療法により改善が認められる症例もありますが、改善しない場合外科的治療が必要になる場合があります。特に病変が広範囲に及ぶ場合、上記のような特殊な手術が必要となります。

口腔悪性黒色腫への下顎部分切除術
【症例】シェットランドシープドッグ 11歳 避妊雌
【経過】口腔内(下顎先端)に発生した腫瘤を主訴に来院。術前の病理検査結果は「悪性黒色腫」であった。
【手術】下顎部分切除術(下顎骨の一部ごと腫瘤を切除する手術)を実施


術前(正面からの外観)

術前(側方からの外観)

下顎部分切除術

術後外観

【術後経過】切除組織の病理組織検査結果は「悪性黒色腫」であり、下顎骨への浸潤が認められた。「悪性黒色腫」は転移性の高い腫瘍であることから、術後抗がん剤治療を開始している。

脾臓血管肉腫
【症例】ゴールデン・レトリバー 7歳 避妊雌
【経過】嘔吐とふらつきを主訴に来院。エコー検査にて脾臓腫瘍および腹腔内の血液貯留を認めた。
【手術】開腹手術を実施。脾臓腫瘍は10cm大で、破裂・出血を起こしていた。周囲組織との癒着を剥がし、血管を止血し、脾臓摘出を行った。



【術後】病理組織検査では「血管肉腫」という診断であった。転移性の強い悪性腫瘍である為、抗がん剤治療を実施している。

【補足】脾臓腫瘍の2/3は悪性であり、さらにその2/3は血管肉腫であると言われています。血管肉腫は肝臓や心臓に転移しやすい悪性度の強い腫瘍です。また、破裂・出血による突然死を起こすこともあり、早期発見の為の定期健診が重要となります。

腸腺癌
【症例】雑種猫 避妊雌 7歳
【経過】1週間前からの毎日の嘔吐を主訴に来院。 エコー検査にて腸管に2cm大の腫瘍を認め、その箇所で腸閉塞を起こしていた。細胞診検査にて上皮系悪性腫瘍を疑い、手術を実施した。
【手術】開腹手術にて腸管の状態を確認した。腫瘍(黄矢印)は小腸の中間に存在し、腸管内腔を埋め閉塞を起こし、手前の腸管は拡張していた。腫瘍の存在する部位の腸管を切除し、径の違いを調整して正常な腸管同士を縫合した。

【補足】猫の腸管に発生する腫瘍ではリンパ腫が最も多く、腺癌が2番目に多い。腸腺癌の手術は、腸管内容物の漏出、縫合部の裂開がなければ比較的長い予後が望めるものである。上記の症例は、嘔吐が治まり食欲も戻り、現在も経過観察中である。

精上皮腫
【症例】雑種犬、未去勢オス、12歳
【経過】かかりつけ医で下腹部の腫れを指摘され、その後当院を受診。右鼠径部に12cmの腫瘍と、腹部リンパ節の腫大を認めた。手術に向けた精査の為CT検査を委託実施した。
 T検査の結果、鼠径部腫瘍は動脈と隣接し、腹部リンパ節は腹大動脈と接するように腫大していた。検査結果より、精巣腫瘍およびリンパ節転移を疑い手術を行った。

【手術】まず鼠径部腫瘍を大腿動脈から剥離し切除した。腹部リンパ節は、腹大動脈との癒着を慎重に剥離し、2箇所のリンパ節切除を行った。

【術後】病理検査の結果は「精上皮腫」という精巣腫瘍であった。リンパ節転移を起こしていたことから悪性度が高いことが予想されるので、今後は慎重な経過観察が必要となる。

猫 乳腺腫瘍
【症例】メインクーン、メス、11歳
【経過】半年前から乳腺にしこりがあり、大きくなって出血したという主訴で来院。 腫瘍は右第4乳腺に存在、3.5×3cmの大きさで自壊していた。院内で細胞診検査を行い、悪性乳腺腫瘍を疑う。各種検査を行い、肺や肝臓への転移は認めなかった。

【手術】片側乳腺切除術を実施した。乳腺付近の血管を慎重に処理し、鼠径リンパ節を含めて腫瘍のある右側乳腺を全て切除した。

【術後】病理検査の結果は「乳腺単純癌、鼠径リンパ節転移を伴う」であった。さらなる転移が予想されるので、手術後から抗がん剤治療を開始した。約10ヵ月間、治療にあたったが最終的には肺転移が原因で亡くなってしまった。
【補足】猫の乳腺腫瘍は8〜9割が悪性と言われています。様子を見ていると、どんどん増大し転移を起こすので、早期での広範囲な外科手術が必要です。また1歳までに避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生を予防することが出来ます。

軟部組織肉腫
【症例】ゴールデン・レトリバー、避妊メス、4歳
【経過】1週間前に右頬部のしこりを発見しかかりつけ医を受診したが、セカンドオピニオンで当院を受診。3.5×3.5cmの皮膚腫瘍に細胞診検査・組織生検を行い、軟部組織肉腫が疑われた。悪性で局所浸潤や再発を起こしやすい腫瘍の為、切除手術を行った。

【手術】腫瘍の際から横に2cmの距離をとって、奥(底部)は筋肉の表面の膜まで切除を行った。目の近くであったので、影響が出ない範囲での手術となった。

【術後】病理検査の結果は「軟部組織肉腫、グレード1(低悪性度)」であった。低悪性度であったので、術後は無治療で経過観察を行っているが現在のところ再発もなく順調に過ごしている。

【補足】軟部組織肉腫は犬の皮膚・皮下腫瘍の約15%を占める悪性腫瘍です。他臓器への転移率は比較的低いが、局所での浸潤性の強い腫瘍であることから、広範囲での切除手術や放射線治療が必要になります。グレード1では再発はほとんどありませんが、グレード2あるいは3では再発や転移の確率が高くなります。

年中無休 午前診療/9:00〜13:00 午後診療/16:00〜20:00 夜間救急/20:00〜24:00

※夜間救急について

Tel.042-750-7880 メールでのお問合せ
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