よくあるご相談
ドライアイ
詳 細
どんな病気?
なんらかの理由により角膜の表面を覆う涙膜の形成に異常をおこし、角膜が乾燥することによっておこる慢性の角膜や結膜の炎症です。ヒトのドライアイよりも犬の場合には症状が重篤になることが多いです。重度になると写真のように角膜に黒い色素がついてしまい、視覚障害をおこします。
どんな症状がでる?
粘度の高い眼脂が出てくる。角膜の光沢がなくなってきた。いつも白眼が充血している。寝ている時に眼を完全に閉じない。などの症状があります。
病院ではどんな検査をするの?
病院ではシルマーティアーテスト(STT)と呼ばれるろ紙を瞼の下に入れる検査で涙液量を測定します。 角膜表面を涙膜がしっかり保護しているかを診るためには、フルオルセインと呼ばれる黄色い液体を眼にたらして角膜表面から染色液が何秒で除去されるかをみる検査(涙膜破壊時間TBUT)を行います。
治療法は?
原因によって治療法と予後はかわりますが、軽度であれば涙液成分の補充と角膜保護用点眼液で治療します。重度な場合にはステロイドや免疫抑制剤を使用します。長期の点眼治療が必要な場合が多いです。
・ソフトサンティア:人工涙液です。眼表面の涙液を補充します。
・エコリシン眼軟膏:抗生物質軟膏です。角膜の感染をおさえるだけではなく眼表面の脂分を補給します。
・オプティミューン:炎症を抑える効果と涙液の分泌を促進する効果があります。
角膜潰瘍
詳 細
どんな病気?
角膜に傷が付いてしまうことによりおこります。浅く小さい傷であっても適切に治療しないと潰瘍が悪化したり、角膜に穴があいたりする可能性があります。元々角膜になんらかの異常がある場合には悪化しやすく、治癒も遅くなるので注意が必要です。
どんな症状がでる?
角膜は知覚神経が集中しているので、小さな傷でも痛みを伴います。突然眼をしょぼつかせたり、気にして掻こうとしたりします。痛みが強い場合には頭部に手を近づけると攻撃的になったりします。
病院ではどんな検査をするの?
フルオルセインと呼ばれる黄色い染色液を眼にたらします。眼に傷がある場合にはその部分が染色されます。
治療法は?
原因や潰瘍の深さによって異なりますが、傷口が浅い場合には角膜保護剤や抗生物質の点眼で治療します。傷口が深い場合には自己血清点眼と呼ばれる自分の血液より作成する点眼液やコンタクトレンズによる保護を併用します。
さらに重篤な場合や点眼液による治療では改善が認められない場合には、結膜フラップや角膜縫合などの手術が必要になります。どの治療法でも眼をかいたりこすったりすると悪化するのでエリザベスカラーの装着が必要です。
・パピテイン:角膜表面を清浄化、角膜融解の防止目的で使用します。
治療しないとどうなる?
傷が小さく感染もなければ自然と傷口が治る場合もありますが、状況によっては角膜が溶けて潰瘍がどんどん進行したり、角膜に穴が開いたりする場合があります。角膜が穿孔すると眼内容物が眼の外に出てしまい、失明する可能性が高くなりますので、例え小さな傷であってもなるべく早く受診をしてください。
白内障(成熟白内障症例)
詳 細
どんな病気?
カメラの「レンズ」に相当する水晶体が濁ってしまった状態です。お年寄りに発生すると思われがちですが、遺伝や外傷、糖尿病などによって若いうちに発生する場合もあります。白内障はものが見えなくなるばかりではなく、重度になるとブドウ膜炎という眼の内部の炎症や網膜剥離・緑内障を起こす可能性があります。白内障の根本的な治療には手術が必要になります。
どんな症状がでる?
写真のように瞳の中が白くなることによって気付くことが多いです。また水晶体の濁りによって視覚障害をおこす可能性があります。
視覚障害をおこすとどういう症状がでますか?
物にぶつかる。動きたがらない。フードを置いても気付かない、または鼻で探るように近づく。飼い主様とアイコンタクトがとれない、表情がなくなるなどの症状がでます。
病院ではどんな検査をするの?
拡大鏡を使い水晶体の混濁の程度を評価します。水晶体を十分観察するには、散瞳剤を用いた散瞳検査が必要です。
白内障が進行するとどうなりますか?
水晶体が濁ることにより視覚障害をおこします。また水晶体の厚さが変化するため、水晶体脱臼や網膜剥離を起こしやすくなります。重度になると水晶体内のタンパク質が水晶体の外に流れ出てしまい、ブドウ膜炎を起こしたり、炎症産物が原因となって緑内障になったりする可能性があります。
治療法は?
一度混濁してしまった水晶体を元に戻す方法は現在のところありません。唯一の治療法は手術で混濁した水晶体内容物を除去して人工レンズを挿入する方法です。混濁が軽度であれば、点眼液や抗酸化サプリメントなどで進行を抑える方法をとります。進行した白内障で諸々の事情で手術を行わなかった場合でも、上記のブドウ膜炎などを予防する必要がありますので、継続的な炎症止めの点眼や定期的な眼圧チェックが必要です。
・カリーユニ:白内障の進行を抑える働きがあるといわれています。
・ティアローズ:抗炎症剤です。白内障にともなうブドウ膜炎を軽減する目的で使用します。
・リンデロン:ステロイド点眼液です。白内障にともなうブドウ膜炎を軽減する目的で使用します。
治療法は?
申し訳ありません。白内障手術には専用の機械が必要ですが、当院ではその施設が現在のところありません。大学などの二次専門施設を紹介することは可能ですのでご相談ください。
※手術は全ての患者様に適応できるわけではありませんのでご注意ください。
※手術をしても定期的な眼のチェックと続発症を予防するために継続的な点眼治療が必要になります。
緑内障
詳 細
どんな病気?
眼の中では常に眼房水という液体の産生と排泄をバランスよく行っています。緑内障とは何らかの原因により眼房水の排泄が出来なくなり、眼の圧力(眼圧)が高くなってしまった状態です。写真のように白目の部分の強い充血と眼の痛みをともないます。眼圧が高い状態が続くと視神経を圧迫し失明にいたります。また眼球も大きくなり(牛眼)、瞬きが出来なくなることにより、眼の表面が乾燥して慢性的な角膜の炎症をおこします。
原因は?
眼房水は虹彩の裏側にある毛様体から産生され、瞳孔を経由して前房に移動し、虹彩辺縁の隅角にある隙間を通って眼の外に排泄されます。房水の排泄経路のどこかで閉塞が起こると、眼内に房水が過剰に貯留して眼圧があがります。
原発緑内障:先天的な隅角異常にともない発症します。アメリカンコッカースパニエルや柴犬、トイプードル、シーズー、マルチーズなど罹患しやすいです。
続発緑内障:網膜剥離、白内障、水晶体脱臼やブドウ膜炎などの眼内炎症により緑内障を発症する場合があります。
病院ではどんな検査をするの?
緑内障の診断には眼圧測定を用います。眼圧検査にて眼圧の上昇が認められれば、緑内障と診断します。また隅角検査を行い、隅角状態を確認します。視神経の圧迫の有無を確認するために眼底検査も実施します。
治療法は?
緑内障の治療は内科的治療と手術による外科的治療があります。内科的治療は点眼薬や飲み薬または注射などによって房水が作られるのを防いだり、房水の排泄を促すことで行います。
・チモプトール:房水の産生を抑制します。
・トルソプト:房水の産生を抑制します。
・キサラタン:房水の排出を促進します。
・外科的治療:レーザーや薬を使って毛様体を破壊して房水を作れないようにしたり、インプラントと呼ばれる管を眼の中に挿入してそこから房水を眼外に排泄させたりします。牛眼になってしまった場合には最終的に眼球を摘出する手術が必要になる場合があります。
※緑内障の外科的治療は現在のところ当院では実施しておりませんので、専門病院をご紹介します。